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TEST REPORT #03 2008年 WRC開幕戦モンテカルロに向けラストスパート

2007年最終テストとなるフレンチアルプス山中でのテスト走行が終了した。テスト期間に時を巻き戻して、テストに臨んでいるスズキ・ワールドラリーチームの様子をレポートしよう。

今回のテストの舞台は、ヨーロッパアルプス最高峰のモン・ブランから西に100kmと離れていない丘陵部の峠道。今年の冬は厳しく、気温計は日々マイナス10度くらいを示す。舗装された道の両側の下草には水滴が凍りついている。ときおり立ち込める前が見えなくなるほどの濃い霧に、絶え間なく晴れ間を隠す厚い雲。標高が高いところでは、路肩が雪に覆われ、朝夕は路面が凍りつく。しんしんと冷える。寒い。12月18日から21日までの4日間を通じて極寒の舗装路を走らせた2組のクルーをご紹介しよう。一組目はファーストドライバーのトニ・ガルデマイスター選手&トミ・トゥオミネン選手、もう一組はスズキファンにはおなじみのP-G・アンダーソン選手&ヨナス・アンダーソン選手。2008年スズキ・ワールドラリーチームのドライバーとしてSX4 WRCを駆る面々だ。

クリスマス休暇を控えアルプスの斜面でウィンタースポーツが盛んになるこの時期に、針葉樹に囲まれた薄暗く霧深い林道で行う走行テストの直接的な目的は、何と言っても年明け1月末に開催されるラリー・モンテカルロに向けたセットアップだ。今回使用するテストコースはラリー・モンテカルロと同じアスファルト舗装路。本番のラリーで走るステージに似たコースを本番に用いるのと同じ車両で実際走ってみることによってしか得られないヒントがある。それを即座にフィードバックし、再び走らせ、限られた時間を活かしモンテカルロで可能な限り速く走れるようマシンを仕上げてゆく。エンジニアもメカニックも必死だ。何しろ、テストが終わってからラリー・モンテカルロのラリー・ウィーク(ラリーの開催される週末を含む週をそう呼ぶ。)開始までには、クリスマス休暇を除いてしまえば1ヶ月弱しかない。手足が凍えるような屋外での整備も、白い息を吐きながら無駄の無い動きでこなす。

テスト初日はP-G選手がSX4 WRCの初走行を体験。霧は出ていたものの路面はドライ。ドライビングのフィーリングを試しながらのドライブを終えたP-G選手は「WRカーに乗れてとにかく感激したよ!初めてのSX4 WRCのドライブは、始まる前はとてもドキドキしたんだ―不安もあったな。でも、実際に乗ってみるととても楽に操ることが出来た。ドライビングが楽なだけでなく、安心感があって気が楽になったよ。これならば、いずれ必ず良い成績を出せるという自信が持てた。もっと練習距離を稼いで、自主トレーニングなどもして体力をつけて世界の舞台に臨みたい。」と意気込みを見せる。JWRCを舞台に新旧スイフトスーパー1600を乗り継いでコツコツとスキルを磨き、2度のジュニア選手権タイトルを獲得してきたこの若手ドライバーが、最高峰カテゴリーでどれだけのパフォーマンスを見せられるか。緊張していないわけがないが、リラックスした様子で、とにかく楽しそうにSX4 WRCのハンドルをなでた。

一方、テスト2日目からテストに臨んだトニ選手は、以前SX4 WRCのドライブを体験している。「久しぶりに乗ったけれど、素性のよさを実感したよ。これからどんどん進化させて、トップクラスのマシンたちに近づけていきたいな。これからのSX4を開発する作業が楽しみで仕方ないよ。ワクワクして眠れないくらいだ。モンテカルロでの本式のデビューが待ち遠しいよ。」と、トニ選手は着実に進歩しているマシンに好感触を得て余裕のある表情を見せる。1993年のラリー・デビュー以来、WRCに90回の参戦経験を持つトニ選手のSX4 WRCへの高評価は頼もしい。また、日本人スタッフが要職を占める開発体制について、コミュニケーションなどで難しさなどは感じないかと訊ねると、「このテストで一緒に仕事をしてお互いの仕事をじっくり見たよ。それでうまくやっていける自信がついた。」と笑顔でコメント。お互いを信頼し、充分にコミュニケーションを取り合えるのは、“強い”ラリー・チームの必須条件なだけに、嬉しいコメントだ。

テストに同行したチーム代表の田嶋は「すばらしい成果が得られています。まだ残っている時間を有効に使って、出来る限り満足のゆく状態に仕上げたい。これからが楽しみです。」と、ドライバーたちの感じている手応えに頬を緩める。ドライバーについて聞くと、「トニ選手の経験と開発力は確かで、彼にして良かった。人柄も、優しい好青年で、いいチームメンバーです。P-G選手はJWRCで4年間成長を見守ってきました。だから世界の舞台でもう一回り大きくなってほしい。2人のドライバーのコンビネーションは来年のWRCの台風の目になるかもしれません。」と笑う。さらに2008年のチーム体制について「このテストから、この場にいないメンバーも含め、来年選手権を戦う体制そのもので行っています。日本に拠点を置くチームですから、今回も日本から開発をリードする役割でエンジニアが来ています。WRCはラリーの頂点を極めるスポーツで、母国や言葉が違っても目指すところは一つ。だから、その目標に向かって一丸となることができる。」と力強くコメントした。

2008年WRC第1戦モンテカルロでSX4 WRCが見せるパフォーマンスを、ぜひ楽しみに待っていてほしい。