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「勝てるクルマ」をつくるために

田嶋 直信 (株式会社スズキスポーツ 取締役 副社長)
渡辺 洋幸 (株式会社スズキスポーツ チーフエンジニア)

田嶋 (直) :
WRCはやはりモータースポーツのトップカテゴリーですから、当然すべてにおいて 非常に高い次元の内容を求められます。その中でも安定して結果を出していくという事を考えると、ドライバーにやさしいというか、コントロール性が高く、安定して速く走れるクルマ。理想的な解答ですけれども、そういうものを強く意識して開発している状況です。

渡辺:
ゼロから4WDターボのマシンを作り上げるわけですから、やはり基本に忠実なクル マづくり、最低限必要なものを投入していくというところから入っていかないと「勝てるクルマ」を作れないと考えています。

田嶋 (直) :
開発の初期段階という事で、エンジン、駆動系、サスペンションも含めて、基本的な 部分を熟成している状況です。この初期モデルで2007年の頭まで走りこみます。そこで得られた成果を参戦モデルに投入して国内で走らせ確認した上で、2007年の春からヨーロッパでのテストを始める予定です。

テスト参戦、そして大きな課題 ― ホモロゲーション

渡辺:
 テスト参戦の前にはホモロゲーションという大きな課題があります。そこである程度完成させたものを申請しないと、あとから問題が起こった時に致命傷になりかねません。(注:一度ホモロゲーションの承認が下りると、一年間は車両・主要パーツの変更が認められない)ですから、ホモロゲーション申請までに、最低限のスペックを固定して裏付けを取っておかないといけない。そうすると、エンジンは本番である程度耐えられるものになっていないといけない。そしてエンジンを車両に搭載したときのレイアウトの全体構想も、ほぼまとまっていなければいけない時期だと思います。

田嶋 (直) :
モノ作りっていうのは何でもそうだと思うんですけれども、やってる中で次々にテーマが出てきます。「ここまで来たけど、もっと先だよね」、「もっとこうしたい」、「いやまだだ」みたいな形にどうしてもなっていくんですよ。やはり時間がどれだけあっても足りないという状態ですが、これをいい妥協点で次の段階に持って行かなければいけない。

WRC用のエンジン開発

渡辺:
JRCとWRCで、エンジン開発の面で最も違う点は、やはりターボです。ターボが付くということで、要求される項目が非常に多くなってくる。ターボが付いていないスーパー1600のエンジンだと、やはり排気量も少ないし使われる回転数もほぼ見えていますから、その領域の中でどうトルク特性を出すかっていうところで項目としてはそれほど多くはないんですよ。むしろそれをどこまで詰めきれるかという課題が多くて、いまだに開発の余地はあるくらいです。対してターボの場合は、ターボなしの項目にプラスして、ターボチャージャーの熱の影響ですとか、元々ターボが付いていないエンジンにトルクで言ったら3倍以上の負担をエンジンに課すことになりますから、元のエンジンの耐久性っていうのも視野に入れてやっていかなくてはいけない。
そういった点で一時はずいぶん苦労しましたが、現在はだいたい性能的にも安定してきて、まだこれから煮詰める必要はありますが、必要最低限のものはメドがついてきたかなと思っています。すぐに勝てるかといったらそれは難しいと思いますけど、まったく勝負にならない状態ではない。ある程度のパワーバンドもトルク特性も得ていると確信しています。

スーパー1600の時、「スズキは何種類のエンジンを持っているんだ?」と、再三いろんな人に聞かれました。イベントによって、ターマックでも低速なターマック、高速なターマック、砂利の浮いているところなど様々ですから、他のチームは最低でも4種類のエンジンを持っていたと聞いています。しかし我々は最終的には1種類のエンジンでこなしてきています。というのは、やはり高回転でもどこにも負けないパワー、低速のどこから踏んでもパワーがついてくる、ワイドなパワーバンドを持ったエンジンを作り上げることができました。それが今のJRCの成功につながっていると思っています。
一方、WRCの場合は34φのリストリクター(レギュレーションで定められている吸気を制限するデバイス)が付いていますから、非常にパワーバンドが狭い。多分想像を絶するほど低速でトルクが出て、高回転は通常走る分には非常に低い回転で、恐らくスーパー1600の半分そこそこの回転数でシフトアップしなくてはいけないような状況ですから、そのパワーバンドをどう生かすかが重要になってきます。

スズキとスズキスポーツの技術的協力体制

渡辺:
市販車のエンジンをラリー仕様に仕上げていくためには、様々な課題があります。 最近はベースエンジン自体が低燃費で、大幅に軽量化されています。 またベースエンジンにはターボがついていないため、高過給や高出力に対する耐久性などを確認しながら作業を進める必要があります。特に冷却系、例えば高出力のエンジンに必要なピストンのクーリングなどといった、一連の装置を付ける必要があるのですが、これを取り付けるスペースがあるかなど、こういった部分は、ベースエンジンを一部変更してでもやらないと、やはり勝てるエンジンは作り上げられません。メーカーと私たちが、共に技術的な課題をクリアしていかなければ、絶対に成し遂げられない事だと思っています。

全16戦を戦うためのチームマネージメント

田嶋 (直):
全16戦を戦っていくためには、物流もそうなんですが、関係するスタッフなど人的なマネージメントについてもきちんと準備する必要があります。世界選手権を戦っていく中で、多くの外国人スタッフやエンジニアの力を借りる必要が出てきますが、もちろんプロジェクトの主導権は日本メーカー、マニュファクチャラーとして、我々日本側で進めていきます。実際にクルマが出来て、熟成という意味のテスト段階では実際に走る場所であるヨーロッパに持っていくのですが、開発・設計・製作はすべて日本で行っております。
チームの構成についてですが、我々としては、2チームの構成をイメージしています。一つはヨーロッパイベントを回すチーム、もう一つはアジア・オセアニア地域で回すチーム。大きく言ってこの2つのチームをうまくまわしながら全16戦を戦っていくことになるでしょう。

ファンの応援が活動の後押し

渡辺:
スーパー1600でスズキが本格的にJRCに出始めてから、非常に多くの人たちに応援していただいてもらっています。さらにWRCというトップカテゴリーに出て行くわけですから、ぜひ注目していただいて、いつ勝つのか見ていてほしいです。より多くの人にラリーに興味を持ってもらって、そしてスズキのクルマにも興味を持ってもらえれば、我々の活動の後押しになりますから、ぜひ応援をよろしくお願いします。

田嶋 (直) :
今まで我々JRCのイベントを戦ってきました。ある程度結果も出してきましたが、それ以上の力でスズキ、スズキスポーツが連携し、力を出していきますので今後とも皆さん応援よろしくお願い致します。