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パドックレポート/土と死海のヨルダン・ラリー

WRCのイベントとしてヨルダン・ハシミテ王国で初開催されたヨルダン・ラリーですが、ヨルダンといわれても場所が思い浮かばないという方も多いのではないでしょうか。ヨルダン・ハシミテ王国は中東の紅海の北、死海の東に位置し、西は死海とヨルダン川を挟んでイスラエルとパレスチナ暫定自治区、東はサウジアラビアとイラク、北はシリアと国境を接しています


今回、チームにとってのラリーは車両やパーツを積んだサービストラックが航路でアカバに到着したところから始まりました。アラビア半島とアフリカ大陸にはさまれた紅海は、アジアとヨーロッパ、そしてアフリカを繋ぐ中東の海上交通の要で、その紅海に面するヨルダン唯一の港湾都市として古来栄えてきたアカバは、年間を通じて雨が少なく温暖な気候と面している紅海の美しさから、現代ではビーチリゾートとしても有名です。アカバ湾の対岸には、右側にイスラエルのホテルが、左側にエジプトのホテルが見え、ヨルダン、イスラエル、エジプトの三国が隣接していることを実感します。 アカバから死海東北岸、デッド・シー・センターのラリー・ヘッドクウォーター(HQ)までは、荒涼とした土漠の中の国道沿いにおよそ300kmの行程です。途中、随所に兵士がカービン銃を持って検問をしていたり、ホテルでも空港みたいな金属探知機をくぐらないとホテルには入れなかったりと、中東情勢の一端が垣間見えました。

ヨルダン・ラリーのHQの周りは西側が死海、東側は小高い丘陵で、死海と土以外には何も無いといっていいようなところでした。サービスパークは土の山を大胆に切り開いて、そこの表面だけ均して固めた人工的な場所に敷かれており、パリ‐ダカール・ラリーのサハラ砂漠に設けられたキャンプ場に通じる雰囲気があります。その一方で、国際的な観光地である死海に臨む斜面に建てられているホテルはまるで地中海のリゾートのようでした。

ラリーの本番に入った金曜日と土曜日はサービスパーク内でいろいろと出し物を見ることができました。写真に写っているのはトランペットとドラム音楽の楽隊で、やぐらの上では大きめの太鼓を派手に鳴らしていました。声がかき消されてしまうくらい賑やかなイベントでした。また、ヨルダン軍のPRブースもあり、軍用ハマーが展示されていました。紛争に備えての装備かと思うと、サービスパーク内は平和と分かっていても気が引き締まる思いでした。


最終日の日曜日にはヨルダン国王アブドゥラ2世ご一行がスズキのサービスにいらっしゃいました。無念のリタイアを喫して気落ちしていたトニ選手とP-G選手ですが、思いがけない王家の方々との対面に大いに喜び、同時にすこし緊張した面持ちで言葉を交わしていました。


さて、ヨルダンは今回初めてWRCの開催国となったため、選手達も思い思いに“未知の世界”を体験してきました。P-G選手がアラビアのロレンスの仮装をしてオーガナイザー主催のパーティに参加したかと思えば、トニ選手は魅惑的なベリーダンスにチャレンジ。また、トニ選手のコ・ドライバーのトミ選手は死海に浮かびながらペースノートの予習に励みました。聖書に「東の海」と記され、アラビア語でロトの海と呼ばれている死海は、東西方向に幅18kmほどの南北方向に細長い湖で、ヨルダン川とその支流が流れ込んでいます。出口が無く水が蒸発するので、塩分濃度は約30%と海のおよそ7倍。よく知られているように、仰向けになってラッコのような体勢をとると何もしなくても安定して浮いていることが出来ます。湖底の泥や塩にはミネラルが豊富で、美容マッサージ用の塩や泥がお土産として盛んに売られていました。

ここで、今回私達が食べてきた料理をご紹介します。最初の写真の上のほうに盛られているのはホンムスと呼ばれるヒヨコマメのペースト。ヒヨコマメを茹でてニンニクのみじん切り、胡麻ペースト、オリーブオイル、レモン汁などを加えて混ぜてすりつぶした料理で、パンにつけるディップやメインディッシュの付け合せとしてアラブ料理にしばしば出てくる一品です。下のほうに盛られているのはピクルスですが、ピクルスにされる野菜には色々な種類があり、どれも割と浅漬けで食べやすかったです。サービスパークにはシャワルマの屋台がありました。シャワルマはトルコ料理のドネルケバブと同じもので、中東の代表的なファーストフードです。街中のお店ではどこでも大きな串に刺されて円柱状になっている肉の塊が目印になっています。この肉の柱の側面をナイフでそぎ落として、ホブズと呼ばれるアラブ風の薄めのパンなどに野菜などと一緒に巻いて食べます。羊や鶏、七面鳥の肉のものがよく売られています。一番右の写真はデーツ(ナツメヤシの実)に皮を剥いたアーモンドを挟んだ素朴なお菓子。デーツはペルシャ(現イラン)原産の古くから知られている果実で、ギルガメシュ叙事詩や聖書、コーランにも頻繁に記述されており、旧約聖書では、エデンの中央に植えられているとされる「生命の樹」の果実として登場します。

最後に、ヨルダンを観光するとき外すことのできない世界遺産、ペトラ遺跡をご紹介します。ヨルダンの首都アンマンから255kmばかり南の岩山の中にひっそりと存在しているこの遺跡を見るには、まず入り口から2km弱は馬車や駱駝や馬に乗って砂利道を行き、ついでシークと呼ばれる自然に出来た細い岩の割れ目を30分ほど歩いて通り抜けます。シークの両側の岩壁は自然と削られたままの肌で高さがおよそ60から100mもあり、とても神秘的です。シークを抜けた先に、映画『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』のロケ地にもなった古代の宝物殿、「エル・カズネ」が待ち受けています。ペトラのある一帯は完全な岩礁地帯で農業には不向きですが、自然の要塞ともいうべき地形と西にガザ、北にダマスカス、紅海にも近い立地を生かして紀元前1世紀ごろから砂漠を移動していたキャラバン隊の中継基地とされてきたそうです。

最後の写真は、ラリー最終日を終えてメカニック始めスタッフ全員ホテルに戻り、プールサイドから眺めた死海に落ちてゆく夕日です。戦いを終え、ビールを片手にひと時の休息を楽しみながらも、すぐ次に控えているサルディニア、そしてそれから先を見据え、皆黙って日没を眺めていました。

 

 

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